急がれる新たな人材開発の仕組みの構築 ≪前編≫ /花田 光世

2010年11月11日

急がれる変化に向けた対応策
 
  最近、TPPをめぐり政府と経済界が唐突とも見える動きを示している。労働者派遣法などの改正も、従来の改正一辺倒の流れから微妙が出てきている。これらの流れの背景は、本当に日本の産業、企業はだめになるのではないかという危機感ではないだろうか。いまここで、抜本的な解決・対応をしていかないと、本当に日本は沈むという認識だ。私は長年、日本能率協会の人事の年次総合大会の企画を担当してきたが、この2月に実施されたHRDJapan2010年のプログラムをふりかえり、日本企業の凋落が現実化してきた中で、手遅れになる前に徹底的な人事の仕組みの再構築が必要との基本認識を示したが、大げさではなく、強い危機意識を持っている。

 いま人事の分野に籍を置く我々に求められているのは、人事のパラダイム転換を推し進める当事者意識ではなかろうか。小手先対応ではなく、組織を強化し、同時に個々人を元気にする人事パラダイムを、今こそ導入しないと本当に手遅れになってしまう。いま我々はどのような人事のビジョン・方針、そしてそれに基づく人事戦略を立てているであろうか。もちろん、いろいろ人事関連の研究はすすめてきた。各国の国としての政策や、組織としての施策をベンチマークしてきた。でもそのベンチマークの結果、どのような施策を現実に実施してきたであろうか。

 例えば①韓国企業や中国企業といった、新たなライバルのアグレッシブな経営と活動に直面し、それに向き合い、対応していかなければいけないのに、ベンチマークをしたあと、どうしたか。これは無理、日本企業はこのようなアグレッシブな動きを支える施策をもちあわせていないと逃げてしまい、韓国企業、中国企業に打ち勝つことにつながる組織強化のエネルギーや気概を失っているように思えてならない。また②オランダ、ノルウェー、フィンランド、スエーデンといった北欧を中心とした各国のWLB(ワークライフバランス)やワークシェアリングの活動をベンチマークはするものの、あれはヨーロッパの国でできること。日本ではとても対応は無理と腰を引き、「仕事と生活の調和」という国主導の指針に対し、個別企業として受け身的に対応することに終始してしまっているように思えてならない。社員を元気にするという視点で、どうWLBに向き合うかという積極的な姿勢は、担当者レベルで留まってしまい、人事の本流の考え方の変革にはつながっていないのではないか。組織・人事としての基本方針、個人のライフキャリアの視点での生き方開発に、どうWLBを生かしていくかという基本スタンスを確立しているとは思えない。さらに組織・人事のグローバルスタンダードなどに対する考え方に対する懸念がある。③アメリカ企業などに特に顕著にみられる、資本の論理を徹底化するグローバルスタンダードの世界的な展開に直面し、我々は後追い的な対応に終始し、主体的にこの変化をとらえ、新しい制度展開に生かしていくという基本的な方針が確立できていないように思われる。その場しのぎ的な成果主義型の評価や処遇の仕組みは導入したものの、この成果主義の元にある、人的資産管理・開発というパラダイムに基づいた人材の育成・活用・キャリア開発というトータルな方針を確立できないままでいる(特にこの人的資源から人的資産への変化にともなうキャリア開発というテーマは次号のニュースレターで取り上げる予定)。

 要するにベンチマークはしたものの、腰が引けたり、小手先対応に終始し、新たな人事パラダイムを確立し、それにもとづいた人事制度の展開がなされていないのである。これを皆さんはどう考えますか?