超長寿社会を生きる知恵 /米田 隆

2011年4月 4日

日本の現在の人口128百万人は、2050年には95百万人に、そして今世紀末には半分の65百万人になると予想されています。しかもその高齢化社会への移行速度は世界最高速で、ドイツや英国の2倍、フランスの4倍です。このため先人に学ぶことができないため、国や個人の対応が遅れ、ただ時間だけが過ぎています。

就業人口の急激な減少は、公的年金や健康保険制度に大きなひずみを生み、制度維持を口実に、制度の改悪が着実に進んでいます。バブル経済の崩壊を財政支出で支え続けた結果、今や財政赤字の累積額は、先進国では最悪の水準となったため、政府の選択肢も限られています。家計も都市化し核家族化したため、個人のリスクを吸収する力が著しく低下しています。一言でいうなら、自助努力が求められている時代がやってきたということだと思います。

 50代半ばとなり私にとっても、日本の超高齢化社会問題は人ごとではなくなっています。35才で日本興業銀行を辞め、起業家への道を選び既に21年が経とうとしています。日本経済が失われた20年を経験する中、幸いにもこの厳しい時代を生き抜くことができ、自分ライフスタイルの中にもひょっとすると若い世代の人達にも参考にして頂けるものがあるのではと考えるようになりました。こうした思いから日頃の財務分野でのコンサルティング活動に加え、超長寿社会に於ける個人のライフスタイルの在り方について本や講演を通して幅広く発言を行っています。

 超長寿社会は、私達に3つの課題をつきつけています。第1が、単に長く生きるだけでなく、健康寿命を長くしなければならないという体の課題。第2に、誰もが65才定年後25年近く生きる時代となり、引退後の生き甲斐が必要になるという心の課題。第3に、年金が実質目減りする一方、引退してから医療、介護コストの高まる一方、医療技術の進歩で長く生きられるようになり、老後資金が不足してしまうリスクが高まるというお金の課題です。

私はこうした3つの課題を同時に解決する方法の1つが、好きで、得意で、価値観を共有出来るものを、自分のライフステージに合わせて生涯現役でやり続けることではないかと考えています。昨年までは、12年に渡り経営に携わってきた米系証券会社から身を引き、再びソロプラクティスに戻った私には、最早定年はありません。今後は75才まで提携する企業や他のプロフェッショナルの皆さんとコラボレートしながら現役で働き続けることを目標としています。好きな仕事だからストレスは少なく、むしろ仕事が健全な生活のリズムを作り、新たな人との出会いや学びの機会を提供してくれてくれるからです。

お金の課題は、金融のプロとしてこれまで多くの著作を出してきましたが、心や体の課題を専門的な立場から発言するには十分な資格がないため、内外の有職者の著作に広く学んできました。その結果、未だ日本では紹介されていない欧米の文献を発掘し、翻訳することを重要な仕事だと感じるようになってきました。海外出張の度に半日、時には丸1日を本屋巡りに当て、関心のある分野での文献探しが今や習慣となっています。こうした地道な活動の1つが、花田教授にもご評価を頂いているAging Well 「邦題:50歳までに生き生きとした老いを準備する」の翻訳作品にも結びついています。直近では、「究極の鍛錬」(原題:「Talent is overrated」)を通じ、あらゆる分野の達人が共通して採用する鍛錬法や生涯学習の重要性についても米国の偉業者研究(expert studies)の最先端の成果を日本の読者に紹介でき、嬉しく思っています。

 今後も高い経済成長が期待されるアジア諸国では、やがて日本を後追いするように、少子・高齢化が進んでいくでしょう。私達の未曽有の少子高齢化の経験は、アジアの人達にも大いに参考になるはずです。超高齢化社会を生き延びるためには、環境変化への対応能力の高い、しなやかな生き方が求められています。これを支える社会インフラの在り方や企業での多様な働き方、そして個人の自律的キャリア創造を財務面から支える個人の財務自立の確立等について、今後も積極的に発信していきたいと思います。