メンタルコンシェルジュ /野口 海

2010年6月 7日

 不安定な世情も絡んで、多くの日本人が「不安」を抱えながら生活している。企業内においても、ストレスの増加、メンタル不全に伴う休職者数の急増、精神疾患による労災数の増加など、メンタルヘルス対策が喫緊の課題となっている。


 私は、「精神科産業医」として企業を訪問し、メンタル不全となられた社員と面談し、人事担当者、経営層と今後の方向性を検討する仕事をしている。


 企業内で働く「産業医」は、「主治医(治療者)」としてではなく、社員と会社(人事)の話を良く聞きながら、安全配慮に基づいた客観的な評価(意見)をすることが求められる。社員の体調や状態の回復度合いなど、「日常生活が出来るレベル」までの回復については、医師にとって割と容易に判定が出来る。しかし、体調不良前の状態と比較して、「就労」が出来るかどうか、「職場環境」をどのように調整すれば良いか、「パフォーマンス」は十分な状態なのかといった人事・労務的な視点は、現場を知らない医師だけで判定するのは難しく、本人・上司・人事担当者と相談し、基準を見出しながら判断することとなる。今でこそ、産業医として、この業務に「ダイナミズム」を感じるようになったが、当初はかなり戸惑ったのも事実である。多くの産業医からも同様の感想をもらうことがあり、企業においてメンタルヘルス対策がうまくいかない理由の一つは、「医療者は会社を知らず、会社は医療を知らない」からであると強く感じるようになった。


メンタル不全の問題は、原因を一つに特定するのが困難で、本人・現場上司・人事・医療者が密な連携を取って問題と取り組まなければ、事の本質に到達することが出来ない。関係者が価値観を共有し、相互に連携し、業務環境を整え、円滑なコミュニケーションを如何に図っていくか、真摯に検討することが求められる。不安定な世の中だからこそ、「会社寄り」でも「本人寄り」でもない、偏ることないバランスの取れたフェアな新機軸を創造し、客観性と妥当性のある判断基準を醸成することが、強く求められていると言えるだろう。


私は、「精神科産業医」から一歩脱皮し、医療と会社との連携調整役【メンタルコンシェルジュ】として、人事+CA+精神科産業医+弁護士による研究会を基盤に、当該者の可能性を最大限に引き出す新しいサポート体制構築のため、鋭意活動展開中である。