「セカンドキャリア支援プログラム」から気づいたこと /前田 恒夫

2010年7月 7日

2007年から団塊世代シニアが定年を迎え、大量に社会へ輩出している。団塊世代の意識に関する複数の調査結果によると、約2/3の人達が何らかの形で、 「社会のために役に立ちたい」というデーターがある。シニア層の意識の一面を示すデーターとして、たいへん興味深い。

 
一方、一部の地方自治体では、団塊世代をターゲットとした人材育成による地域活性化を狙った「生涯現役塾」が、相次ぎ、開講されている。生涯現役塾とは、 今まで培ってきた知識、経験、を役立て、社会貢献活動や街おこしの担い手を発掘・育成することを目的としたものである。20066月に北九州市が「生涯 現役夢追塾」を、20096月に八王子市が「はちおうじ志民塾」という講座をそれぞれ立ち上げた。背景として、少子高齢化が急速に進む中、地域の様々な 問題に正面から向き合い、地域活性化に関わるキーパースンとして、団塊世代シニアの力に大きな期待を寄せる行政の思惑が窺える。

 
私は、たまたま、八王子市に14年間在住した地縁から、本塾に関わり始めて2期目を迎えた。プログラムづくり、一部セッションの担当講師として、また、 「学ぶ」立場の塾生としての双方の関わりがある。企業人中心の関わりでドップリ浸っていた私自身にとって、この関わりは実に新鮮で、目から鱗の多様な世界 への遭遇があり、新しい価値観の広がりに繋がったことを実感している。以下、地域社会への関わりの有り方を通して、シニア層のセカンドキャリア移行時の課 題を共有したい。

 
先ず、過去のタイトルを捨て、自分の持ち味、強みは大切にしつつも、オープンな気持ちで新たに学び直せるかというマインドセッティングが重要になる。長年 の会社人生で築いた名刺上のタイトルをなかなか捨てきれないシニアが多い。会社人生卒業と同時に名刺がなくなり、素の一個人として、自分の「持ち味や強 み」は何か、これから自分を「何と名乗ろう」か、はたと感じる人達が多い。中には、新たな名刺を求めての参加者や、大企業での上級管理者経験の延長線上 で、上から目線の気持ちで参加する人も散見される。

 
では、これらの参加者の意識をどうリセットするか。私が担当する「人生の棚卸」セッションでは、「職縁社会」から「地縁社会」への意識転換をテーマとして、以下のような試みをしている。

 
・人のものの見方には偏りや盲点があることへの気づかせるサポート。例えば、複数の騙し絵を見せ、議論しあうことにより、ジョハリの窓の心の鍵を開かせる工夫をしている。

 
・守秘義務順守の下、オープンな気持ちでの相互フィードバックの奨励。

 
・担当講師を含め、お互いを「さん」づけで呼び合う。特に、担当講師を敢えて「先生」と呼ばせないことで、一個人としての意識づけの重要性認識に努めている。

 
・出来る限り、異なるバックグランド同士となるような、多様性を意図したグループワークのメンバー編成。幸い、公務員、刑事、学校教師、個人事業家、中小 企業経営者、弁理士、専業主婦、等の多様な経験をもつ参加者も多く、企業社会経験者の人達とバランスよく配置できるので、参加者同士で、腹を割って語り合 うことにより、多様な価値観、職業観があることへの気づきに発展しやすい。

 
次に、地域におけるキーパーソンとの関わり方を学ぶことが重要になる。私は、運動会等の町内会イベントへの顔だしや生ごみ問題、地域猫問題といった地域イ ベントや地域問題への積極的参画を奨めている。なぜなら、このようなイベントや問題は、どのように向き合い、当事者意識を持って、関わるかだけでな く、地域での存在価値の高い主婦の方々とどう関わるかが鍵となるからである。私自身、家内とともに生ごみ問題、地域猫問題に関わってみて、主婦の方々との 意思疎通の難しさを実感した。先ずは、夫婦間の良好な関係がないと物事は先に進まないという現実を体験した。

 このように、「生涯現役 塾」では、従来の「企業内キャリア研修」とは異なり、異なる世界観の広がり、新たな人的ネットワークの構築、自律心の啓発・醸成等が得られると考える。企 業内同質社会の組織を離れ、一個人としての異質な環境に触れることによる「気づき」の効果は実に大きいと感じている。

 以上、地域社会への貢献を目的とした、セカンドキャリア移行時の課題を述べてきた。これらの課題解決には、参加者のオープンで、新たに学び直すというマインドセッティング、互援・互恵の精神の下で関わりあうことが重要であると認識している。