学生に対するキャリア支援の一考/佐久 浩子

2010年9月 7日

企業のキャリアアドバイザー(以下CAと呼ぶ)として、悩みや不安に陥った社員に、自分の可能性をどう切り開いて行くか支援することが主たる仕事であった。しかし、ここ数年大学生や高校生に対しキャリア支援をする仕事が増えてきている。

 

 若年層のキャリア支援は、「学校教育から職業生活への移行がうまくできない若者が増大したことで、学校と企業が連携し義務教育から社会人としての必要な能力を育てる」(文部科学省中央教育審議会1999)という動きから始まったものである。各大学にキャリア支援室等が設置され、学生へのキャリア支援や教育は、定着しつつあるが、ここ数年の潮流により学生対応の難しさを痛感しているようだ。


企業のCAから見ると学生と社会人の大きな違いは、キャリア(実践・実績)がないことに尽きる。あったとしても、そのほとんどがアルバイト、良くてボランティアやNPOであり、社会的責任はやや軽いように感じる。よって、リスクも少なく、そこで培った経験をどう社会に役立てるのかという視点が弱い。


学生と社会人両者へ支援をしているCAは、多くの経験や複数の選択肢があるからこそ、キャリア支援は活きてくると感じているのではないだろうか。そうなると、経験、選択肢の少ない学生に何をアドバイスすべきなのか考えさせられる。また、厄介なことにこの2年間は雇用の壁も高く、就活を目前にした学生にとって、キャリア支援=就活指導であり、学生は自分の可能性を考える以前に内定をもらうための裏技を求めてくることもある。(予備校のように裏技中心のキャリア支援否定はできないが・・)こう考えると学生へのキャリア支援は、社会人とは一味違う工夫が必要となる。

 

最大なる工夫は、学生に「創造」させること。働くことを「描かせる」ことだ。

 

自分の拙い経験を通じ、「いつか社会の役に立ちたい」と思わせること。「なぜ働くのか」「会社とは何のためにあるのか」を創造させ、働くことを描かせる。そのための情報をCAが提供し、本人の経験を引き出す。この協働作業を丁寧に繰り返すことが重要であり、描けたら背中をそっと押し社会に送り出せばよい。「創造する」ことは、頭の中に車のハンドルの様な遊びを作る。遊びがあれば、デフレや不況が続いたとしても“がっかり”することは少なくなるだろう。

 

学生の心をいくら強くしても、それよりもっと強い風が吹けば心は折れてしまう。どんな強い風にも折れないしなやかな心をCAは作ってあげなければならない。